野村総合研究所(4307)の増配と金融ITの成長

野村総合研究所(4307)年間88円への増配と金融ITの成長

この記事は「累進増配スクリーニング」の増配ニュースです。配当を減らさない方針と増配の余力を持つ企業を選び、1株ずつ買い増す企画の視点で、今回の発表を読み解きます。

選別では、累進配当・同等方針の明示、会社予想の普通配当性向40%以下、過去10期の無配・減配履歴、会社予想PER12倍以下(10倍以下を重視)、普通配当利回り3%以上を確認します。減配歴がある場合は、原因と解消状況、回復後の配当も調べます。

野村総合研究所は10月29日15時30分、年間配当予想を84円から88円へ引き上げました。金融ITやシステム運用の成長が、利益と配当にどうつながっているのか。前期の海外事業の減損も確認し、現在の株価で企画の購入条件に合うかを考えます。

今回の増配

2027年3月期は、中間配当42円を据え置き、期末予想を42円から46円へ増額します。年間では従来予想84円から4円、4.8%の上方修正です。前期実績77円との比較では11円、14.3%の増配になります。今回の配当に記念・特別配当の記載はありません。

背景は、上期実績と足元の受注を踏まえた通期業績予想の引き上げです。売上収益は8,500億円から8,700億円、営業利益は1,750億円から1,800億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,190億円から1,230億円へ修正されました。

中間配当の基準日は9月30日、支払開始予定日は11月30日です。これから買う株では今回の中間配当の権利は得られません。年間88円を使う利回りは銘柄比較のための指標で、今から購入して受け取れる金額を示すものではありません。

直近決算の振り返り

2027年3月期上期の売上収益は4,299.1億円で前年同期比8.3%増、営業利益は882.7億円で12.0%増、親会社の所有者に帰属する中間利益は600.1億円で12.0%増でした。営業利益率は19.8%から20.5%へ改善しています。

以下は直近3期の通期実績です。2026年3月期は売上が増えた一方、営業利益と純利益が大きく落ちています。この落ち込みを理解しないと、今期の増益率を読み違えます。

直近3期の通期実績

前期は、豪州のNRI Australia Limitedで約770.0億円、北米のCore BTSで199.1億円の、のれん等の減損損失を計上しました。両社の業績悪化を受けて事業計画を見直し、買収等で計上した資産の回収見込みを引き下げたためです。

今期の純利益予想1,230億円は、前期の152.6億円に対して706.1%増ですが、この数字には減損の反動が含まれます。会社の説明資料では、一時的要因を除いた前期参考値との比較で純利益12.0%増、営業利益14.9%増としています。参考値は会計上の実績と区別し、本業の比較には上期の増益と採算改善も併せて見ます。

海外事業は回復途上です。上期のオセアニアは営業黒字へ転じましたが、北米は売上が9.9%減り、営業損失4.5億円が残ります。減損の計上時に同額の現金が流出するわけではありませんが、投資した資金が期待した利益を生んでいないという意味は重く、損失処理だけで問題が解決したとは言えません。

事業と利益の源泉

事業と増配

野村総合研究所(NRI)は、コンサルティングとシステム開発、稼働後の運用を一貫して提供する会社です。証券・銀行・保険向けの金融ITに加え、流通・製造・サービス業や公共分野のシステム、データセンター、ネットワーク、セキュリティなどを手がけています。

金融ITでは、複数の顧客が利用する共同利用型システムや、事務処理を引き受けるBPOも提供します。顧客の業務を理解してシステムへ落とし込み、運用まで支えるため、開発と継続的なサービスの両方に接点を持つ事業です。利益を伸ばすには、人件費・外注費や開発案件の採算管理も重要になります。

今回の上期では、金融ITのセグメント売上収益が2,445.4億円で前年同期比8.8%増、営業利益が423.2億円で17.7%増でした。会社は、受注環境の良さと運用サービスの増加が採算を押し上げたと説明しています。サービス別の外部顧客向け売上でも、運用サービスは1,785.0億円、8.3%増です。

通期売上予想の200億円の引き上げは、金融ITの190億円増、IT基盤サービスの50億円増、コンサルティングの40億円減という内訳です。すべての事業が一様に伸びる予想ではありません。既存システムの刷新やセキュリティ需要を取り込みつつ、各分野の強弱を見ていく決算です。

配当の安定性と増配余地

安定性

2017年3月期から2026年3月期までの10期を、現在の株式単位にそろえると、年間配当の減配・無配はありません。2018年3月期と2019年3月期はともに30円で、毎年連続して増えているわけではありません。

10期の配当推移

2018年3月期の30円には、現在の株式単位で約3.33円の記念配当が含まれます。普通配当は約26.67円で、翌2019年3月期は普通配当だけで30円でした。記念配当がなくなった後も総額を維持し、普通配当を増やした形です。

2017年3月期は期中に1株を1.1株に分割しています。そのため、中間40円を1.1で割り、期末40円と合算したうえで、2019年7月の1株を3株にする分割を反映すると約25.45円です。グラフでは期中分割前後の金額を単純合算していません。

会社の方針は、成長に必要な内部留保を確保しながら安定配当を続け、連結配当性向40%を目安に利益・キャッシュフローを勘案するものです。配当の継続実績は評価できますが、「減配しない」という累進配当の明示とは区別します。今回確認した配当方針・資本配分方針にDOEの数値目標はありません。過去のDOE実績を、将来の約束へ読み替えないことも大切です。

最新開示の予想配当性向は40.1%です。会社は年間配当金総額(社員持株会専用信託への配当を含む)を親会社利益で割っています。一方、1株当たりで88円÷予想EPS218.50円と計算すると40.3%です。定義の異なる値を混同せず、会社公表値を主に記載します。いずれでも、この企画の40%以下の条件は満たしません。

増配余地

上期の営業キャッシュフローは945.3億円で、前年同期から28.3%増えました。利益だけでなく、本業から得る現金も増えている点は増配を支える材料です。

投資キャッシュフローは276.7億円の流入でしたが、主な収入は定期預金の払い戻しです。営業CFと投資CFを足した1,222.0億円を、そのまま本業の稼ぐ力と評価することはできません。預金の移動を含むため、投資CFの中身を分けて見る必要があります。

利益と資金の使い道

上期は取締役会決議に基づく自己株式取得に710.6億円、配当支払いに241.2億円を使っています。このほか、社員持株会専用信託の再設定に伴う自己株式取得239.9億円と長期借入240.0億円があり、通常の株主還元による買い戻しとは分けて把握します。

9月末の現金及び現金同等物は1,428.4億円、会社定義の有利子負債は2,188.1億円です。ネットD/Eレシオは前期末0.05倍から0.19倍へ上昇しました。中期計画の上限0.5倍は下回っていますが、配当・自社株買いと成長投資が同時に進むため、手元資金だけを見て還元余力が無制限にあるとは考えません。

会社はAI・セキュリティ・社会共創を成長領域に据えています。2027年3月期の設備投資予想480億円のうち、無形資産が420億円です。システムやソフトウエアへの投資が、運用サービスの拡大や生産性改善につながるかが、次の利益と増配を考えるうえでの確認点になります。

配当株としての投資評価

5条件の照合と購入判断

累進配当・同等方針の明示は確認できず、予想配当性向も40%をわずかに超えます。過去10期の減配・無配がない点は条件を満たしますが、終値5,992円と最新会社予想EPS218.50円で計算したPERは27.42倍、普通配当88円による利回りは1.47%です。PER12倍以下・利回り3%以上の価格条件からも距離があります。

このため、現在の株価では本企画の新規購入を見送ります。主な理由は、配当を減らさない方針の明示がなく、配当収入を重視する購入価格の条件も満たさないことです。一方、金融IT・運用サービスの成長、上期の採算と営業CFの改善、10期の配当継続は評価できる材料です。

今後は、海外事業が安定して利益を出せるか、ソフトウエアへの投資が収益へ結びつくか、還元方針に新たな約束が加わるかを確認します。株価だけが下がっても、利益予想や配当方針が変われば再計算が必要です。事業の成長力と、この企画で今買えるかは、それぞれの根拠で判断します。

出典・計算基準

株価基準:2026年10月29日15時30分の東証終値5,992円(前日比−145円、−2.36%)。21時32分ごろJSTにYahoo!ファイナンスと株探で終値・前日比を照合しました。Yahoo!はリアルタイム表示、株探は15分遅延表示ですが、取引終了後の終値を使用しています。開示は15時30分で、この日の下落を発表への反応とは断定しません。指標は株価サイトの更新前の表示を使わず、最新開示の配当88円・EPS218.50円で再計算しました。

野村総合研究所「業績予想及び配当予想の修正に関するお知らせ」2026年10月29日、PDF1〜2頁。業績・配当予想、配当方針、配当性向の定義。
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120261027556545.pdf

同「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信」2026年10月29日、冒頭1頁・添付資料2〜9頁。業績、事業、資金、予想。
https://data.swcms.net/file/nri-ir/dam/jcr:131a4fe5-0277-494c-8662-dc0ea44d4ae1/140120261027556542.pdf

同「2027年3月期 第2四半期決算説明会資料」2026年10月29日、資料15〜16・20〜21・39〜42頁。減損等を除く参考比較、運用サービス、海外損益、設備投資、資本配分。
https://ir.nri.com/jp/ir/library/financial/main/00/teaserItems1/01116/linkList/0/link/20261029_financialresultspresentation.pdf

同「2026年3月期 決算短信」2026年4月24日、冒頭1頁・添付資料20頁。2025・2026年3月期実績と海外減損。
https://data.swcms.net/file/nri-ir/dam/jcr:ccde7f3d-4493-4d01-bbbb-059aae5dee38/140120260423509100.pdf

同「平成30年3月期 決算短信」2018年4月26日、冒頭1頁。2017・2018年3月期配当、期中分割、記念配当。
https://ir.nri.com/jp/ir/library/financial/main/011111117/teaserItems2/0/linkList/0/link/File838117625.pdf

同「2020年3月期 決算短信」2020年4月28日、冒頭1〜2頁。2019・2020年3月期配当、2019年7月の株式分割。
https://ir.nri.com/jp/ir/library/financial/main/011111118/teaserItems2/02/linkList/0/link/140120200428401390.pdf

同「2022年3月期 決算短信」2022年4月27日、冒頭1頁。2021・2022年3月期配当。
https://ir.nri.com/jp/ir/library/financial/main/0111111113/teaserItems2/02/linkList/0/link/20220427_financialstatements.pdf

同「2024年3月期 決算短信」2024年4月25日、冒頭1頁。2024年3月期業績、2023・2024年3月期配当。
https://data.swcms.net/file/nri-ir/dam/jcr:9f089e11-4b96-4063-8af5-7a6b241e561f/140120240422573620.pdf

同「配当・株主還元」。2026年10月29日確認。基本方針と基準日。予想配当性向は最新の10月29日開示を優先。
https://ir.nri.com/jp/ir/stock/shareholder.html

TDnet「2026年10月29日 適時開示情報」。公表時刻15時30分。
https://www.release.tdnet.info/inbs/I_list_002_20261029.html

Yahoo!ファイナンス/株探、野村総合研究所株価。2026年10月29日終値。
https://finance.yahoo.co.jp/quote/4307.T
https://s.kabutan.jp/stocks/4307/

本記事は公開情報に基づく情報提供であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。予想・方針は変更される場合があります。投資判断はご自身でお願いいたします。

コメントをどうぞ