この記事は、配当を維持・増額する方針を持つ企業を1株ずつ買い増す「累進増配スクリーニング」の個別銘柄リサーチです。
累進配当または前期以上を基本とする同等方針の明記、予想普通配当性向40%以下、予想PER12倍以下、普通配当利回り3%以上を重視します。直近10期の無配・減配も確認し、減配がある場合は原因・解消・配当水準の回復を調べます。
今回は増配ニュースをきっかけに、佐賀銀行を取り上げます。年間配当の増額に加え、会社が示す「累進配当の導入を検討」という方針が気になりました。導入済みの企業と何が違うのか、利益と資本の状況から購入条件への適合を考えます。
年間110円から120円へ。増額は中間配当
佐賀銀行は2026年10月23日15時、2027年3月期の年間配当予想を110円から120円へ引き上げました。中間配当を55円から65円へ増額し、期末配当予想は55円を据え置いています。年間では従来予想比10円、約9.1%の増額です。
前期の2026年3月期は、中間50円・期末60円の年間110円でした。今回の120円予想は前期比でも約9.1%増ですが、内訳では中間が15円増、期末が5円減です。「中間も期末も前期より増える」という内容ではありません。
今回の開示に記念・特別配当の記載はなく、年間120円を普通配当予想として扱います。中間65円も発表時点では予想です。
佐賀と福岡の企業・暮らしを支える銀行
佐賀銀行は佐賀市に本店を置き、佐賀県や福岡県など北部九州を営業基盤とする地方銀行です。企業向け融資、個人の住宅ローン、預金・決済に加え、事業承継や経営課題の解決を支援しています。
収益を見るときは、貸出金から受け取る利息と、預金などの調達に支払う利息を分けます。決済や経営支援などの手数料収益、有価証券の利息・配当や売却損益も業績に関わります。
2026年3月期末の連結貸出金残高は2兆3,569億円、総預金残高は3兆9億円でした。貸出金は前期末から1,086億円増えています。地域の資金需要に応えることが収益を育てる一方、融資の拡大にはリスクに見合う自己資本も必要になります。

中間利益は上方修正。通期予想は据え置き
同時に修正したのは、2027年3月期の中間期、2026年4~9月の業績予想です。
連結経常収益は320億円から370億円、経常利益は81億円から83億円、親会社株主に帰属する中間純利益は51億円から58億円へ増額しました。純利益予想は7億円、従来予想比約13.7%の上積みです。前年同期の実績50.22億円と比べると、約15.5%の増益予想になります。
会社の説明では、銀行単体の経常収益を押し上げる主因は、有価証券ポートフォリオの改善に向けた売却益です。ただし、それに伴う売却損も増える見込みです。そのうえで、貸出金利息と役務取引等収益が増え、経常利益・中間純利益が従来予想を上回るとしています。
売却益の増加をそのまま利益の増加と見ることも、すべてを融資の好調だけで説明することもできません。運用資産の入れ替えによる損益と、貸出・手数料の収益を分けて読む必要があります。
一方、通期の連結経常利益147億円、純利益93億円の予想は据え置きです。会社は経済・金融情勢などの不透明さを理由に挙げています。前期実績の経常利益123.07億円、純利益85.85億円からは増益予想ですが、今回、年間利益まで上方修正したわけではありません。

通期純利益93億円から中間予想58億円を引くと、下期相当額は35億円です。これは会社が新たに公表した独立の下期予想ではなく、単純差額です。中間期の増額を、そのまま通期の上振れ確定と受け取らないための確認になります。
直近の決算実績は、8月5日公表の第1四半期です。連結経常利益は40.05億円、純利益は29.09億円でした。今回の中間58億円とは、実績と予想を区別しています。
累進配当は「導入を検討」。その条件は自己資本
今回の増配開示で示された基本方針は、内部留保に配慮しながら安定的な配当を行うというものです。これだけでは、毎年の配当額を減らさない累進配当の約束には当たりません。
ただ、2026年6月の会社説明会資料には、今後の方向性が具体的に書かれています。自己資本比率が安定的に8%を上回った際に、累進配当や業績連動配当の導入を検討する方針です。それまでは安定配当を続けながら内部留保の充実を優先します。
ここでの8%は連結ベースで、リスクアセットに対する規制上の自己資本比率です。決算短信冒頭にある、会計上の自己資本を総資産で割った3.9%とは別の指標です。
2026年3月末の規制上の自己資本比率は、連結7.74%、単体7.81%でした。会社説明会資料によると、利益の蓄積で自己資本は増えましたが、貸出金の伸びを背景にリスクアセットも増え、比率は低下しました。この数値は3月末の実績であり、10月現在の比率ではありません。
利益が増えて配当性向が低くても、増えた利益をどこまで配当に回すかは資本の状态に左右されます。今回の会社では、利益の伸びに加えて、自己資本比率の改善と還元方針の正式な変更が、その後を考える手掛かりになります。「検討」は実行の確約ではなく、8%を一度超えれば自動的に導入されるわけでもありません。

過去10期は減配・無配なし。予想配当性向は約21.8%
2017年3月期から2026年3月期までの年間配当は、現在の株式単位にそろえると、70円、70円、70円、70円、70円、70円、70円、80円、90円、110円です。この10期に1株当たり年間配当の減配・無配はありません。今期120円は、その後に続く予想として分けて表示します。
2017年10月1日に10株を1株とする株式併合がありました。2017年3月期の年間7円は70円に換算し、2018年3月期は併合前の中間3.5円を35円へ換算して、期末35円と合わせて70円としています。短信の年間欄にある「―」を無配とは数えません。

年間配当予想120円を、第1四半期短信に記載された同じ2027年3月期の予想EPS550.26円で割ると、連結予想配当性向は約21.8%です。会社が配当性向21.8%を目標として掲げたという意味ではなく、会社予想を使った計算値です。確認した現行資料には、DOEの数値目標の明示はありません。
数字の上では配当に回していない利益が多く残ります。ただし、残りの利益をすべて増配できる余力とは扱いません。貸出の成長を支える資本、信用コスト、有価証券運用の損益も関係するためです。
銀行の営業キャッシュフローも、一般事業会社と同じ感覚では読みづらい数字です。2026年3月期はマイナス754.46億円でしたが、会社は貸出金の増加による支出などを説明しています。営業CFがマイナスという一点で、配当原資が尽きたとは判断できません。預金・貸出の増減と、利益・自己資本の蓄積を分けて考えます。
現行の購入条件では、今回は対象外
取得基準:直近終値(2026年10月23日・東証)/取得日時:2026年10月25日05:55~05:58 JST/出典:Yahoo!ファイナンス、Investing.com/遅延:休場中の確定終値。日経は取得不能で、指定3ソース照合は未完了です。
佐賀銀行(8395)の終値は6,070円、前日比は60円安(約0.98%下落)でした。Yahoo!ファイナンスとInvesting.comの時系列で終値・前日比・出来高が一致しています。Investing.comの概要画面には取引途中の値が残っていたため、終値とは分けました。
銘柄名:佐賀銀行/コード:8395/現在値の代替:直近終値6,070円/前日比:−60円(−0.98%)/当日高値・安値:取得不一致のため採用せず/出来高:138,800株/時価総額:約1,028億円(発行済株式総数×終値)/52週高値・安値:3点照合できず未確定/直近決算日:2026年8月5日(第1四半期)。
120円の年間配当予想から計算した利回りは約1.98%、予想EPS550.26円によるPERは約11.03倍です。Yahoo!ファイナンスの配当指標欄には修正前の110円が残っていましたが、ここでは10月23日開示の120円を用いています。

予想PER12倍以下、予想配当性向40%以下、直近10期の配当履歴は条件内です。一方、累進配当または同等方針はまだ導入済みと確認できず、配当利回りも3%に届きません。現行の増配ポートフォリオでは、新規購入の対象外と判断します。これは私の選別条件による判断で、会社全体の評価や他の投資手法での適否を決めるものではありません。
流動性は参考欄とし、直近5営業日の売買代金中央値は未集計です。一日の出来高だけで合格とはしていません。また、価格の3ソース照合が未完了である点も残しています。
今回の増配で注目したいのは、安定配当の積み重ねに加えて、累進配当を検討する条件が示されていることです。今後、規制上の自己資本比率がどう改善し、還元方針が正式に変わるか。その変化を確認したうえで、株価と利回りを含めて見直したいと思います。
確認した資料
業績予想の修正および配当予想の修正(増配)に関するお知らせ(2026年10月23日、1~2ページ。会社開示原本・TDnet配信)。
2026年3月期 決算短信(2026年5月12日、冒頭および本文2~3ページ。業績・貸出・預金・CF)。
2027年3月期 第1四半期決算短信(2026年8月5日、冒頭1ページ。直近実績と通期予想EPS)。
2026年6月 会社説明会資料(資料31・33・46ページ。資本政策、株主還元、自己資本比率)。
2024年6月 会社説明会資料(資料38ページ。2018~2023年度の配当実績。年度は翌年3月期に対応)。
2018年3月期 決算短信、2020年3月期 決算短信、2022年3月期 決算短信(各冒頭の配当欄。2017年の株式併合と過去配当を照合)。
Yahoo!ファイナンス・株価、Investing.com・株価時系列(2026年10月23日終値。日経取得不能、日中高安に不一致)。
本文は2026年10月25日JSTに確認した会社開示と株価情報に基づきます。イラストは事業を題材にした架空の演出で、実際の店舗・設備・出来事の描写ではありません。
この記事は情報整理を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。