アドバンテストが、2027年3月期の中間配当を1株49円に決めました。前年同期の29円から20円、約69.0%の増配です。AI向け半導体の検査需要が伸び、同時に通期業績予想の上方修正と、上限2,800億円の自社株買いも発表しています。期末・年間配当は未定です。
「累進増配スクリーニング」は、減配しない方針と配当余力を調べ、価格条件に合う株を1株ずつ買い増す企画です。配当方針、予想配当性向、直近10期の配当履歴、予想PER、普通配当利回りを見ます。今回は増配ニュースをきっかけに、アドバンテストの事業と決算を読み、現行企画での新規購入に見合うかを考えます。
中間配当の増額と、2,800億円の取得枠
今回決まったのは、2026年9月30日を基準日とする中間配当です。直前の会社予想は未定だったため、増配率は前年同期の実績と比べています。配当原資は利益剰余金で、効力発生日は12月1日。記念・特別配当の記載はありません。
自社株買いは、金額で2,800億円、株数で1,100万株がそれぞれ上限です。取得期間は2026年10月29日から2027年3月24日で、取得枠の決定段階です。会社は、今回の業績予想と手元資金を踏まえ、株主還元と資本効率の向上を目的に挙げています。
AI向け半導体の検査装置と、保守・消耗品
アドバンテストは、半導体に電気信号を与え、性能や動作を調べるテストシステムを販売しています。演算や制御を担うSoC、データを記憶するメモリ向けの装置に加え、装置の保守や検査用のインタフェースボードなども収益源です。
会社は、AI向けの高性能半導体の生産増と複雑化が、テスタ需要を押し上げたと説明しています。上期はSoC向けが伸び、メモリ向けではDRAMと不揮発性メモリの双方が増加。設置済みの装置が増えることで、保守サービスや消耗品の販売も広がっています。

営業利益率54.0%と、通期予想の上方修正
2027年3月期上期の売上高は8,452億円で、前年同期比60.5%増でした。営業利益の伸びは売上を上回り、営業利益率は前年同期の約44.1%から約54.0%へ上昇しています。販売増に加え、売上の製品構成が改善したことが会社の説明です。
為替も追い風でした。上期の平均ドル円は160円で、前年同期の146円より円安です。海外売上比率は99.4%に達しており、需要の強さと為替の寄与の両方が今回の業績に含まれます。
通期の営業利益予想は、7月時点の8,460億円から9,670億円へ、親会社所有者帰属の純利益予想は6,600億円から7,415億円へ引き上げました。下期の為替前提は1ドル150円です。会社は、SoCテスタの販売拡大と製品構成の改善により、下期も営業利益率50%超を見込んでいます。

年間30円の下限と、3年間の総還元方針
2024年4月から2027年3月までの第3期中期経営計画では、安定した事業環境を前提に、年間配当30円を最低額としています。配当と自社株買いを合わせた総還元性向は、3年間合計で50%以上を目途とする方針です。成長投資や事業環境の変化によって、実行できない場合もあるとしています。
この方針に、毎年の配当を前年以上にするという累進配当の明示はありません。また、50%は自社株買いを含む3年間の総還元性向であり、単年度の配当性向ではありません。DOEの数値目標も明示されていません。
配当履歴は、完了済みの2017年3月期から2026年3月期までを比較しました。2023年10月の1対4の株式分割を調整すると、2020年3月期は前年の23円から20.5円へ減配しています。この10期に年間無配はありません。2027年3月期は中間の49円までが決まり、年間額はまだ比較できないため、グラフでも別枠にしています。

評価益を含む純利益と、現金の使い道
上期の純利益は3,681億円、前年同期比116.8%増でした。この伸びには、本業の好調に加え、投資有価証券の評価益を主因とする金融収益約570億円が含まれます。評価益は保有する金融資産の価値の変動で、装置販売の利益や売却による現金収入とは性質が異なります。
一方で、営業キャッシュフローも前年同期から増えています。在庫増加による約1,195億円の資金負担や、法人所得税の支払い約1,098億円があったものの、利益の拡大に加え、営業債務や前受金の増加が資金繰りを支えました。在庫残高は前期末の2,317億円から3,524億円へ増えています。今後は、この在庫が販売と代金回収につながるかが焦点です。
投資キャッシュフローの支出は、主に負債性金融商品の取得によるものでした。会社は、投資有価証券の取得を、包括的なソリューション提供に向けた戦略投資の一環と説明しています。営業CFから投資CFの支出を差し引いた額は約961億円です。これは財務活動による資金の出入りを含まないため、すべてを追加還元に使える資金とは扱いません。

現行企画での新規購入は対象外
AI向けテスタの成長、利益率の改善、中間増配と大規模な自社株買いは、今回の強い材料です。ただし、2026年10月28日の終値34,930円で照合すると、現行の累進増配企画では新規購入の対象外と判断します。主な理由は、累進配当の明示がないことと、予想PERが条件を超えることです。
- 配当方針:累進配当、または前年以上の配当を続ける同等方針の明記が条件。現在は明示なしです。
- 配当余力:普通配当ベースの予想配当性向40%以下が条件。年間配当が未定のため、今回は算出・判定を保留します。
- 配当履歴:直近10期の無配なしを確認し、減配は例外審査。今回は減配あり・無配なしです。
- 割安さ:予想PER12倍以下が条件。会社予想EPS1,027.08円で計算すると約34.01倍です。
- 利回り:普通配当利回り3%以上が条件。年間配当が未定のため、今回は算出・判定を保留します。

今回の決算から分かるのは、半導体の数量増だけでなく、複雑化に伴う検査需要と製品構成が、テスタメーカーの利益率を押し上げていることです。その成長を評価する材料と、継続的な配当収入を狙う購入条件は、それぞれ確認する必要があります。今後の配当方針、年間配当、利益予想と株価の変化が再検討の材料になります。
出典・計算基準
剰余金の配当(中間配当)に関するお知らせ:2026年10月28日、1ページ。決定額、基準日、原資、期末・年間未定。
https://www.advantest.com/ja/news/2026/mpd9kn0000000gg0-att/J_Info_20261028_03.pdf
自己株式の取得に係る事項の決定に関するお知らせ:2026年10月28日、1ページ。取得枠・期間・目的。
https://www.advantest.com/ja/news/2026/mpd9kn0000000gfl-att/J_Info_20261028_02.pdf
2027年3月期 第2四半期決算短信:2026年10月28日、表紙・添付2~5・7ページ。上期業績、通期予想、為替、金融収益、財務・CF。
https://www.advantest.com/document/ja/investors/ir-library/result/J_FR_FY2026_2Q.pdf
2026年度第2四半期 決算説明会スライド&ノート:2026年10月28日。スライド9~10・14・18ページ対応のノート。戦略投資、下期利益率、還元。
https://www.advantest.com/document/ja/investors/ir-library/result/JE_BIZ_261028_note.pdf
2026年3月期 決算短信:2026年4月27日、表紙。2025・2026年3月期の連結業績と配当。
https://www.advantest.com/document/ja/investors/ir-library/result/J_FR_FY2025_FN.pdf
配当・株主還元:2026年10月28日確認。現行方針、2023~2026年3月期の配当、2023年10月1日の1対4分割。
https://www.advantest.com/ja/investors/shares-and-corporate-bonds/profits/
過去配当:2018年3月期 決算短信、2020年3月期 決算短信、2022年3月期 決算短信の各表紙。2017~2022年3月期の年間額を4分の1へ換算。履歴図は年間総額で比較しています。
https://www.advantest.com/document/ja/investors/ir-library/result/J_FR_FY2017_FN.pdf
https://www.advantest.com/document/ja/investors/ir-library/result/J_FR_FY2019_FN.pdf
https://www.advantest.com/document/ja/investors/ir-library/result/J_FR_FY2021_FN.pdf
株価:Yahoo!ファイナンスと株探で、2026年10月28日15:30の東証終値34,930円を照合。取得は同日21時台JST。Yahoo!はリアルタイム表示、株探は15分遅延表示。PER=終値÷2027年3月期会社予想EPS。発表当日の終値を使用し、発表後の株価反応は評価に含めていません。
https://finance.yahoo.co.jp/quote/6857.T
https://s.kabutan.jp/stocks/6857/
本記事は公表資料に基づく情報整理と個人の考察です。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。業績・配当予想は変わる場合があります。イラストはAIで制作した事業イメージ・架空の演出です。